本は事実を示してくれるが、そこに命を吹き込むのは君の想像力だ。/R.P.ファインマン

 想像力をかきたててくれる源泉について、デジタルとアナログの時計を題材にして考えてみましょう。

 デジタル時計は、その時間を文字として表すので瞬時に時刻が分かります。しかし、時間の経過、残り時間を知るには、意図して引き算、足し算をしなければなりません。

 アナログ時計は、文字盤という図形が時間を表わすので、時刻を読み取るのに多少のタイムラグがあります。しかし、そのタイムラグの間、無意識のうちに時間の経過、残り時間などを針の位置で考えてもいます。つまり無目的ではあるけれど、同時に複数の思考回路を働かせているのです。

※ 時刻は、時の流れの中の各瞬間、つまり、1点を示します。時間は、時刻のある点からある点までの時の経過の長さを示します。

 時間的または空間的に連続して変化する量(ボリューム)を表すためには実体が必要です。そのボリュームを実感するには、前に述べたアナログ時計の特性を考えると、アナログな世界が適しているようです。

 ところで書物(紙の本)は、ボリュームを持ったアナログ空間です。 その場限りの知識を得るのではなく、想像力を働かせて知を体系的に学ぶには、「書物」の方が適しているといえましょう。

蛇足的追記 媒体を構成する内容(コンテンツ)は、伝達手段の如何にかかわらず創造性が出発点です。一冊堂は、その内容を書物という手段で伝達していきます。